Morse returns2009/11/20 23:48


デンマーク・カクタスの今年最初の開花。これは二日前くらいなのだが、今はもう次々開いて凄いことになってゐる。


例によって色々やりながらClassic FMを聴いていたら、非っっっ常に聞き覚えのある曲が流れた。あれっ何だっけなんだっけこれ。すっごく好きな曲なんだけど何の曲だったか思い出せない(←好きなのに忘れとるんかという突っ込みはなしでお願いします)。映画音楽だったか、何かのサウンドトラックか。ていうか自分の手持ちのCDにあるよねこれ?モリコーネ...じゃないし......と一分くらい考えて思い出した。英ITVドラマシリーズ『モース警部(Inspector Morse)』のテーマ曲でした。この曲が好きな余り英国に行った時にサウンドトラックCDも買って帰ってました。もちろん今も手元にある。当時はしばらくこればかり聴いていたのに一発で思い出せない自分の記憶力が恐ろしい。ちなみに昔から推理小説なんかも何年かして再読するとトリックの詳細どころか犯人までころっっと忘れてたりするのも珍しくないので、年のせいとかいうわけではないと思う。

自分の鶏頭自慢はともかく、忘れてた人間が言うのも何だけどこのテーマ音楽がほんっっとに名曲なんですよ。冒頭の、オルガン?キーボードかな?の単音の出だしが始まるとぞわぞわっとする(上の状況で久し振りにMacから流れてきた時もここでぞわっときた)。そう言えば、初めてこのテーマ曲を聴いた時にちょっと信号みたいだな、と思ったのだが、後になってこのテーマ曲で一貫してベースのように流れている「信号」、本当に信号だったのが分かった。つまりツーツートントンのモールス信号ですよ。で、モールス=Morse=モースな訳ですよ。原作者のコリン・デクスター(Colin Dexter)が主人公をこの名前にしたのはモールス信号の考案者のS.F.B.モース(モールス)と関係があるのかどうかは知らないが、このドラマ版のテーマ曲では、曲の冒頭から最後まで、主旋律の後ろでモールス信号で「M - O - R - S - E, M - O - R - S - E...」と繰り替えされているというわけ。このテーマとサウンドトラックを担当したBarrington Pheloungという人、何とも心憎いことをやってくれるではないですか。これ、80年代にこのTVシリーズが放送開始されて初めてテーマ曲が流れた時、モールス信号を知っている人はニヤッとしただろうなと。ちなみにこの話題は英語版のWikipediaに詳しく載っている(Musicの項)。なぜか日本語版は、大体この英語版を元に和訳してあるらしいのにモールス信号の話も含めてかなり割愛してあるんだけど。

Wikipedia "Inspector Morse (TV Series)"

そんなトリック(?)も隠れていたりするこのテーマ曲なのだが、個人的には何というのかな、chillingという表現が一番ぴったりするような気がする。この場合「怖くてゾッとする」とはちょっと違う、まあ日本語にすると「ゾクゾクする」かなと思うんだけども、静かにさわさわーーっと緊張感のようなものが来るというか。とか下手な説明休むに何とかなのでとりあえずこんな曲なんですよ。

Theme for "Inspector Morse" (YouTube)

上に書いたモールス信号に関しては、「MORSE」は信号にすると「- - - - - ・ - ・ ・・・ ・」、つまり「ツー・ツー・ ツー・ツー・ツー・ トン・ツー・トン・ トン・トン・トン・ トン」。どですか、それを頭に入れて上の曲を聴くとちゃんと信号になってるでしょ。

ついでにドラマのラスト・シーンも入っているものがあったのでそちらも。これは自分は観た憶えのない回だったので調べてみたところ、「The Silent World of Nicholas Quinn (ニコラス・クインの静かな世界)」のラストシーンらしい。

"Inspector Morse" drama last scene & End Theme (YouTube)

これはちょっとユーモラスな場面で終わっているが、このシリーズは事件は解決してもあまりすっきりした結末じゃなかったり、やり切れない感じの終わり方の話も多いので、そういう時に画面が暗転してこのエンド・タイトルがすーっと入ってくるともうね、さわさわーーっとくるわけですよ。や、明るめのラストでも同じだけど。シリーズ通して、例えばポアロなんかのような軽妙な雰囲気のミステリとは違う現実的でシリアスな展開なのと併せて、主役のモースが孤独な人という印象が強い(「寂しい人」とはちょっと違う気がするけど。「孤高の人」の方が近いかも?)のもあって、ドラマティックだけれども抑えた、哀愁を含んだ深みのある旋律がぐぐっとくるわけですよ。シリーズの幕の引き方と、モース役のジョン・ソウ(John Thaw)がドラマシリーズ完結からあまり間をおかずに亡くなったことも考えるとこれまたぐぐぐーっと。名作です。ドラマも音楽も。もちろん原作も。そう言えば、原作者のコリン・デクスター、TVシリーズに毎回ちょこっとした役で出てるらしいですね。ITVのInspector Morseセクションの"Cast and Characters"頁に役名「エキストラ」でちゃんと出てるのにちょっと笑いました。ある意味レギュラー。



いよいよ鍋のおいしい季節になりましたね。まずはシンプルに鶏団子と野菜の鍋。