補足続き2005/04/22 22:21

...補足の割にえらい長いですが。

さてシスティナ礼拝堂での投票が始まると、各枢機卿は三角形をした投票用紙に「書いた人物を特定しないような」書き方で法王にふさわしいと思われる人物の名を記入し、祭壇の上のカリス(ミサなどに使われる脚つきの杯)に投じる。この時枢機卿一人一人が祭壇に進み出て「私は私の証人として主キリストを云々私の投票が神の御前に云々」と宣誓をしてから票を投じるので、今回の場合115人全員が投票するだけで結構な時間がかかると思われる。全ての投票が終わると用紙は数えられ開票される。記入された名前を読み上げながら用紙を針で突き通していき、最後にもう一度票を数えた後投票用紙は燃やされる。つまり礼拝堂の煙突から上がる『合図の煙』はこの投票用紙を燃やした煙だったわけだ。2/3以上の得票で法王が決定すれば通常の白い煙、決まらなければ黒い煙。

昔はこの黒い煙を出すために投票用紙と一緒に湿った藁が燃やされたらしいが、1978年の2回のコンクラーベでは今回と同じく薬品が使われたそうだ。それでも前回の段階で煙の色がはっきりしないという不平が聞かれたため、今回はその後に聖ペテロ教会堂の鐘を鳴らして結果をはっきり知らせる措置がとられたらしい。ちなみにコンクラーベ二日目からは午前中に二回、午後に二回ずつの投票機会が設けられるため(一日目は午後に一回だけ)、二日目以降一回目の投票で決まらずすぐに二回目の投票に入る場合は一回目の投票用紙は脇に取り置かれ、二回目の投票が終わった後二回分一緒に燃やされる。今回の場合法王決定の白煙が上がったのは二日目の午後遅くなので、枢機卿達は一日目と二日目合わせて5回の投票を経て最終決定に達したものと思われる。115人の枢機卿が5回に渡って一人ずつ「私の投票が神の御前に」...新法王が誰を新しく枢機卿に指名するかはともかく、とりあえずせっかちな人は枢機卿には向かないということでよろしいか。

選挙の最後にそれぞれの投票結果を記した文書がまとめられて封筒に入れられ、封印の上で新法王に手渡される。これは法王の命によってのみ開封を許されるそうだ。隔離エリア内での話合いや選挙に関する詳細を関係者が口外することは、選挙が終わった後でも禁じられている。これを破った者はもちろん破門。
選出された候補者は法王職を受け入れることに同意した後(同意しなかったらどうなるのかは書かれていない)、「いかなる名によって呼ばれることを望むか」尋ねられる。選挙の過程で自分が選ばれるかもしれないと予想していた場合はある程度事前に考える時間もあるが、有力候補者が二人いるがいつまで経ってもどちらも必要な数の票を得られない、などという場合今まで全く挙がらなかった第三の『妥協候補者』の名前が出てくるという例もあるようなので、こういう経緯でいきなり選ばれた人物の場合は「象徴的な意味がある」と見なされることが分かっている法王としての名前をこの場で決めなければならない事態になるわけだ。先日言及したわずか一カ月の在任で他界したヨハネ・パウロI世が選んだのはそれまでの伝統から外れた2つの名前だったが、同法王はこれを前任のヨハネXXIII世とパウロVI世への尊敬を表したものと説明したそうだ。 もしかしてちょっと苦し紛れでした?

この名前決定に続いて他の枢機卿達は新法王に近づいて尊敬と服従の意を表し、その後法王はバルコニーでの『お披露目』に先立って新しい礼服を着せられることになる。法王付きの仕立師は誰が選ばれてもいいように様々なサイズの礼服をあらかじめ準備しているが、新法王の体型に合わせるため土壇場の針仕事が必要になる可能性も大きいとか。聖ペテロ教会堂のバルコニーに姿を見せたベネディクトXVI世はできたてほやほやの礼服をお召しだったのかも。この最初のお披露目で伝統的な"Urbi et Orbi"(『ローマ内外の信徒へ』向けた)の祝福を与えることで、新しい法王の任期が始まったことになる。

実際はいつまで経っても決定に至らない場合はどうするかとかまた色々と面白い規定や慣例が細かくあるようだが、今回の場合に当てはめた新法王の選出過程は大体ここに書いたようなものと推測される。自分自身は実際にカトリックの習慣やものの見方に慣れ親しんでいるわけではないので、今回の手続きにはいわゆる知的好奇心(と言うと聞こえはいいが単純に物珍しさ)から興味があったわけだが、カトリック系の学校に通われていた少女浪漫館のリリカさんのブログには前法王の死去や新法王の誕生についてまた違った視点からの記述がされていてこれまた興味深いので、気になる方はぜひどうぞ。


壺と言うかポット色々。きれいなお姉さんが頭に載せて運んでそうな。...ちょっと違うか。やっぱり歪んでます。精進します。