...y un dia en Mitaka.2007/10/15 23:58

というわけで日曜日、友人とカルロス・ヌニェス(Carlos Nunez)のコンサートに行って参りました。以前にもサイトやここで触れているスペインはガリシアのガイタ(ガリシアのバグパイプ)/ホイッスル(木製のリコーダー)奏者。会場は三鷹市公会堂。チケット予約に出遅れて席は端寄りだったが、コンサートに先立って同じ公会堂の別館で「カルロスによるホイッスル実演&レクチャー、参加者先着20名」があったので昼前に待ち合わせ。間際にダメで元々、と電話してみたら定員には達したけど若干名追加の枠に入れて貰えたのだった。バスに乗って10分くらい?で現地に到着。最初どれが公会堂か分からなくて逆方向に行きかかったけどバス停留所の向かいにあるのがそれと判明。なんか古いコンクリート造りで施設なのか何かの繋ぎ的部分なのかよく分からない上、物凄く人気がないのでどうも「今日コンサートがある会場」て感じに見えなんだ。しかし前に行ってみると確かに「本日の公演」にカルロスの名が。

間違いなさそうだということで近づくが、やっぱり中はどう見ても閉まってます状態。というかわたしたちの場合まずはレクチャーが開かれる別館を目指さねばならないので、別館の案内を探してうろうろ。申し込んだ時に応対してくれた公民館の人は「案内を出しておきます」とおっしゃっていたのにそれらしいものはない。半径50m以内にいる人といったら道路の向こうでバス待ってる人達くらいなので、誰かに別館の場所を聞くわけにもいかない。とりあえず建物の周囲を回ってみようと横手の駐車場に行くと、照明機材を運んできたらしい小型コンテナ車?が停まっている。高校時代演劇部で照明をやっていて機材とかコンサート中の照明係の人が気になる方なので、あっ照明車〜とか言いながら会館の裏手へ。しかし人いないな。建物横に内側にカーテン?がついた戸が開け放してあって、なんか食堂の勝手口みたいだなぁと思いながら「これってもしかして関係者出入口、とか...」と言いかけたら、丁度前に停まった車から数人の人が。おお人だ人だ。   ていうか、   なんか    妙に見覚え

物凄く見覚えのあるカルロス・ヌニェスと愉快な仲間達御一行。

ゑ?   ゐ??   はい?

情況が飲み込めず混乱する我々の前をてくてく通過するカルロス一行。しかし明らかにこちらを意識している模様。ていうかカルロス、いきなり口笛とか吹き出してそれは「いつ話しかけられてもオッケーさ」なアピールですか。しかし、この場合我々は迷って別館別館とうろうろしていた上、まさかこんなところでスペインの国民的大スター(なんですよ)とそのバンドが物凄くふっつーーにメンバーだけで(通訳らしい日本女性は一人いたけど)てくてく勝手口(←違)に入って行くところに遭遇するとは思わなかったので、「ど、どうしよう」とか思いつつすーーっと見送って別館?と思われる建物入口の方向へ。いや、実際ああいう時って「話しかけた方がいいのかな」とか思っても何を話せばよいやら。いきなり「キャーカルロス!」とか言えないし、サインはもう持ってるし、握手して下さい!でもないし、ていうかこの後レクチャーで会うしなあ。とか思いつつ既に15m位?離れたさっきの裏口をふと振り向くと、

パンチョさんがこっち見てるじゃないですか。

わたくし、カルロスはもちろん好きだけどこのパンチョ・アルバレスさん大好きなんですよ。カルロスとは現在のバンドの形態になる以前から長年一緒に活動しているブズーキ(マンドリンにちょっと似た形?の弦楽器)/フィドル(ヴァイオリン)奏者で、ソロでも2枚ほどアルバムを出している。パンチョさんのサイン欲しさに(目の前で本人がサインしたわけではなくカードが入っていた)、カルロスのコンサート会場でパンチョさんが参加したガリシアのミュージシャンのコンピレーション・アルバムを買ったこともある。で、そのパンチョさんが一人裏口の入口に残ってこっち見てにこにこなさってるわけですよ。なな何だ何だこの情況。他にだーれもいないから我々を見ているのは(一人で屋外で笑顔の練習をする習慣のある人でもない限り)間違いない。はは話しかけて...しかしパンチョさんて、以前のステージでスペイン語しか話してなかったような。通じないかも...とか思うと腰が引け、それにやっぱり後で会うしなぁ、ととりあえずにっこり笑ってみる。するとパンチョさんも更ににっこり。こうして距離をおいて双方で数秒間満面の笑顔を交換した後、じ、じゃ後で...という意味を(本人的には)込めつつ会釈して(向こうにどう伝わったかは謎だけど)ぎこちなくその場を去る。

     あーびっくりしたびっくりした。とかまだ動揺しつつ何とか別館らしき建物に入り、会場の会議室を探す...けどこれもよく分からず狭い廊下を何度か行ったり来たりして、結局受付で聞いて(やっと会館の人がいた)部屋が「和室」に変更になっていることを知り、まだ受付時間になっていなかったため何の表示もなかった部屋がそれであることを確認。しばらく待って扉が開いたのでレクチャーのチケットを買い(別料金なの)、中へ...入るとなるほど思いっきり和室。というか普通の畳部屋だけど。そしてずらーーっと並べられた座布団。こ、ここでほいっするのれくちゃーを。

ええ、やりましたよ30人余りの日本人が座って見上げる前でカルロスがレクチャーを。なんか見ようによっては演芸会なんですが。いや中世以前の音楽の形態から技術の進歩や他地域の影響で楽器や楽曲の構成が変化する流れとか、彼自身の音楽に対する考え方とか、スペイン人はコンサート会場でナンパするので時々「あなたのコンサートで知り合ったので私達の結婚式で演奏して下さい」と手紙が来るとか、口から息を出すと同時に鼻から空気を吸う奏法を応用してワイン引っ掛けた後運転して帰るとき検問の呼気検査を切り抜けた(←よい子は真似をしない。)とか、「ホイッスル実演」は実際全体の10%位だったような気もするけど盛り沢山の一時間で楽しゅうございました。質問時間があまりなく(というか1質問されるとカルロスが10くらい答えるので)て我々は質問できなかったのがやや残念だけど。わたしが聞きたかったのはちょっと長い質問だったし。...あと通訳がちょっと、いやかなり。参加者のあちこちから訳を直される通訳ってどうなのかと。せめて一般的な音楽の知識がある人をお願いしたい。


景色が反射して見難いと思いますが「三鷹市公会堂ホール催し物案内:カルロス・ヌニェス」催し物...そうだけどさ。左側の掲示板(?画面切れてるけど左にもっと広い)には「ありったけ貼ってみました」て感じでカルロスだらけ。...いま気付いたけど一番上のポスター、というか実際カラーコピーなのだが、カルロスの背後にあるのはまさしく三鷹市公会堂。何度も目にしたはずなのにカルロスしか見てなかった。明らかに下のチラシの公式写真(これはガリシアの海が背景)の人物部分だけ切り取って公会堂の写真に合成したものではないか。いいのかこれ。ていうか三鷹市公会堂を背後にバグパイプ抱えてポーズを決めるカルロス...位置的に言って彼のすぐ前にはバス停があって小田急バスを待つ地元民の皆さんが座ってるわけですが。


で、コンサート本番まで3時間弱の時間があるので、とりあえず何かお腹に入れに食べる場所を...探したら公民館の隣のカラオケハウスのそのまた隣にあるスーパーマーケットの二階の家電量販店の隅に食堂があったので、そこで親子丼(友人)とゆかり炒飯(わたし)を。「ゆかり炒飯」、一般的な炒飯にゆかりがたっぷり入ってました。初めて見た。窓の下の自転車置き場でいま買った大量の品物を籠に入れようとしている人はどう見てもさっきレクチャーに来ていた人だ、とか(近所の人なのか...)、「カルロスさんはこれから練習に入りますので」とか言ってたけどこの雰囲気だとバンドのメンバーと隣のカラオケハウスで盛り上がっててもおかしくない気がするとか、どこで「ナンパ」とかいう日本語を憶えたんだカルロス、とか与太話をしつつ烏龍茶をすする。

この時点で既に何しに三鷹まで来たかよく分からなくなってきている我々、量販店でMac売場とかカメラ売場とか冷やかしつつのたのた公会堂へ戻る。...と、おおお人だ人がいる。さっきはだーーーれもいなかった会場前が大賑わい。そうかコンサートにきたんだったね。結構開場時間が押したが、コンサートは予定の5時数分過ぎに開演。さっきはかなりふつーな恰好だったカルロス、ちゃんとスーツでカッコよく登場。パンチョさんもスーツでカッコよくフィドル弾きつつ登場(にへら)。パーカッション関係のシュルショ(XurXo Nunez、カルロスの弟。似ている。)もカワイイ。も一人カワイイフィドラーのパロマ・トリガス(Paloma Trigas)が何か別人になってるよ!と思ったら別人だった。この夏からアイルランド人のニーヴ・ニ・カラ(Niamh Ni Charra)というお嬢さんに変わったらしい。やっぱりカワイイ。外見の好みで選んでないかカルロス。

チケット発売当初は言及されていなかったはずの日本人ゲスト(中世のハープ奏者と『ゲド戦記』のアニメーションに出ていたお嬢さん)がちょっと気になっていたが、どちらも雰囲気を壊さない参加の仕方だったのでいい感じだった。...当日券も余っていたようだったので後からゲストを呼んだのだろうか。スペインでは数万人規模のスタジアムを埋める人なんだけどなカルロス。『ゲド戦記』の音楽に参加しているのでそっちの曲が多かったのはまあ仕方ない。個人的にはもっとスパニッシュ・ケルトっぽい傾向の曲とか、パンチョさんのソロとかやって欲しかったけど。初めてのコンサートの時に真っ赤なシャツに黒いパンツでブズーキ弾きながら高らかに歌うパンチョさんに惚れたんだもーん。いい声なのよ。アンコールの時に何か落としたらしく仕切りに床を探していたパンチョさん、落とし物は見つかりましたか。「コンタクト・レンズとかだったらどうしよう」とか心配してたんですが。ちなみに我々の席は丁度彼側(ステージ向かって左)だったので端寄りでもちょっと嬉しかったり。

ステージ後は会場で販売されていたCDを買った人向けのサイン会。実は最初は「もうソロ・アルバムは全部持ってるし買わない」と思っていたのだが、休憩時間にちょっと見に行ったら数年前に出た"Cinema do Mar(日本語版は『シネマの海』そのまんま)"がかなりいい感じの選曲で(タイトルからしてよくある「ヒット映画の曲を演奏してみました」的内容かと思い込んで「また『タイタニックのテーマ』とかかな...」と内容まで確認していなかった。ごめんカルロス。)、ここ数回のライヴで演奏しているラヴェルの『ボレロ』やロドリーゴの『アランフエス協奏曲』も入っているのを発見して衝動的に買ってしまい、折角持ってるなら...とサイン会の列に並んでしまった。前に別のCDにもサインしてもらったのだが、カルロスの場合ちゃっちゃかサインせずに色々話してくれるので。そしてこちらが女性の場合漏れなく両頬にちゅーして下さいます。←ちなみに男性の場合は「キミはもうアミーゴだ!」て感じの固い握手です。分かりやすい人だ。ちなみにサインは

"to Leanne(←仮名) (ハートマーク) Carlos"

...ハートマークを描く男性を見たのは初めてかも知れない。いや、"Love, Carlos"なのは分かるけど。実はわたくし最初は「潰れたB?」と思っていたら友人が解読して下さいました。ごめんカルロス。

ああ、しかし今になってみるとあの「勝手口の遭遇」でパンチョさんに話しかけなかったのが返す返すも口惜しい。びっくりというより余りにふつーに遭遇してしまったので頭が働かなかったと言うか、「また後で会うからいいや」って確かにカルロスにはレクチャーとかサイン会で会ったけどパンチョさんに間近で会う機会なんてあの時だけだったのに。千載一遇のチャンスだったのに。わざわざ「話に来てもイイよ」ムードを作っててくれたのに。あああ自分のばかばかばか。きっと「あの日本人は何がしたかったんだろう」と思ったことであろうよ。好意を無にしてすみません。でもパンチョさんがいい人なのは間違いないので惚れ直しました。というわけで、いい人パンチョさんがカッコイイステージ映像をYouTubeから一つ。

→ Carlos Nunez "Jigs and Bulls" (live)

カルロスももちろんかっこいいですよ。シュルショもなんか動物っぽいけどかっこいいですよ。でもパンチョさんてばパンチョさんてばパンチョさんてば...(涙)←泣くな。

も一つYouTubeから、『ボレロ』を。これを聴いていると何だか元からガイタの曲だったような気がしてくる。もう少し長く演奏してくれたら嬉しいのに。
→ Carlos Nunez "Bolero" de Ravel (live)

そんなわけで、楽しかったり盛り上がったりうろうろしたりどひゃーだったり何じゃこりゃだったりへたれなワタシだったりした一日でした。一緒に珍道中(?)してくれたふかじまさんありがとうございます。

コメント

_ 摩埜 ― 2007/10/16 22:04

すっごく楽しくも充実したコンサートだったのですねー。
楽しく読ませていただきました♪
YouTubeの映像も見てきました。バグパイプのこんな演奏は初めて見ましたです。スコットランドの民族衣装をまとって、式典なんかで演奏するなんてイメージしか持って無かったです。アップでみることもめったにないので、とても面白かったです。
印象的だったのは、吹いてない時に音が出てる!ということで、最初はどうしてどうして?と不思議に思ってしまいましたが、考えてみれば当たり前なんですね。脇に抱えた袋の部分に空気をためておいて、そこから空気をぎゅぎゅっと押し出しながら演奏してるんですね。これのために音が途切れることなく演奏できるんだー、とひたすら感心です。
お隣ですっごい早弾きでストリングを演奏なさってるのが、りあんさんvvのパンチョさんですね。バグパイプの音と綺麗に合わさって、ホントにもううっとりでしたよー。
お声をかけられなくて、さぞかし痛恨のりあんさんだと想像いたしますが、こーゆう風にいきなり目の前に憧れの人が立ったりしても、そんな気軽に声なんかかけられませんよう。相手が日本人だったとしても、私なら顔がひきつったような笑顔しか作れないと思います(泣)。

_ りあん ― 2007/10/17 02:31

たはは、長々した三鷹の一日におつき合い下さってありがとうございます。
バグパイプ、スコティッシュの楽団なんかだとずっと口で吹いてるように見えますが、おっしゃる通り時々空気を吹込んでやれば袋(bag)に溜めておけるのですよね。アイルランドのイーリアン・パイプ(Uilleann pipes)と呼ばれるタイプは座って演奏するのが普通らしいですが、脇に挟んで腕で空気を入れられるふいごがついているので、口で吹かずに済んでこれまた便利のようです。スコティッシュの場合やはり正装して演奏するのが普通(?)なのかびしっと直立して顔を上げているところしか見たことがないですが、ガリシアの「ガイタ」は基本演奏姿勢は似ていてもっとリラックスした感じでしょうか。しかし4年前に現地に旅行した時に道端で演奏している人を見たところ、カルロスのように歩き回ったり飛び跳ねたり奇声を上げる演奏法(?)は稀と思われます(笑)。

早弾きパンチョさんカッコイイでしょカッコイイでしょ〜〜〜。彼もカルロスに合わせてかなり激しく動くときもあるのに手は物凄く正確なんですよう(それくらい当然なのかも知れませんが)。カルロスとシュルショ兄弟&パンチョさんは長い付き合いだけあって非常に息が合っているのですが、若いシュルショの方はカルロスも見せ場を作ってやって盛り上げている感じなのに対して、パンチョさんは一歩退きつつがっちり支えてるゼ!て雰囲気が堪らんのです(←言わせといてやって下さい)。

物凄いチャンスをぽえーっと見送ってしまいましたが、あんなとこで遭おうとは誰が思いましょうか。例えば摩埜さんなら、お引っ越ししたお友達の家を訪ねようと探していたら、目の前の十字路を浅倉さんが歩いていたとかそんな感じでしょうか。やっぱり摩埜さんも声かけられませんか。ですよねえ(涙)。人にもよるのだろうと思いますし、カルロスにしてもどう見ても「僕急いでないから止めてもいいよん」て風だったので、道でファンに声を掛けられるのなんか慣れてるんだろうとは思いますけども、ここで止めたら迷惑かな(カルロス一人に話しかけても全員止まるだろうし)...とか、通訳の人(or招聘元の人?)に何か言われそうだな...とか、色々考えてしまうのですよねー。これで今までにも「偶然出くわした(好きな)有名人」を見送って、後からもう二度とないような偶然だったのにな〜と思ったことが何度か。しかしパンチョさんが二度目のチャンス?を作ってくれたのにそれもみすみす見逃した自分は相当へたれかも知れません...

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