悪の定義2008/06/22 23:58


野菜売場に「サラダほうれん草」というのがあったので、確かにそのままサラダにするには食べやすそうだと思って買ってみた(写真の赤い茎がサラダほうれん草)。...なんか味がないんですが。癖がないと言うよりは非常に味が薄い。あの独特の味があるから鉄分摂ってるぞー!て気分にもなるんじゃないですか。ていうかこの味じゃ鉄分も低そうな気がする。最近こういう改良(?)野菜みたいなのを買うと大抵味と言うか風味が薄くて後悔するのだが、売場の説明書きとか何かを見るとよく「癖がなく食べやすいです」とかあるので、そういうのが受けるということなんだろうか。個人的には「癖がない=その野菜独特の味が薄くてつまらん」と思うんだけど。今度普通のほうれん草買ってきて生でバリバリ食べよう。


昨日の『山吹色のお菓子』から派生して気になったこと、というか大分以前からどうなのかなーと思っていたこと。先日の記事で触れたお菓子の説明書きにも「決め台詞」として挙げられていた、勧善懲悪の時代劇の悪徳官僚(代官とか)と商人の典型的なやり取りで官僚側が言う「お主も悪よのぅ」の一言、自分が見慣れていたこの手の台詞が出てくる時代劇では「お主もワルよのぅ」と言っていたと記憶しているのだが、その後時代劇が変に現代っぽくなってしまいあまり面白くなくなった&時代劇ドラマ自体数が激減してあまり見なくなってからしばらく経った頃、同じ状況同じ台詞なのにも関わらず「お主もアクよのぅ」とかいう言い回しを耳にするようになってゑっっ!?となった。どこで聞いたのかはっきり思い出せないものの、文面にしたらどちらも「悪」なので、「ワル」とはっきり分かったということはTVなどで誰かがそう発音していたのを聞いたのだろうと思う。パロディものとか、何かで話が出た時に誰かが「その台詞」を発して受けを取ったとかいう状況で、実際の時代劇で「アクよのぅ」と言われたのを聞いたことはなかった...多分...とは思うが、一度ならず聞いた憶えがあるのでナンだそれは?と思った憶えが。

確かに「アク」も「悪」の正しい読み方だし、「ワル」という言い回しはむしろ俗語だと思うし、時代劇でも善人側が使う時は「悪をのさばらせるわけにはいかん」とか「この世の悪を斬る!」とか普通に「アク」の方の読みで使うが、この場合漠然とした「悪いこと、それを行う悪人達、世間に蔓延する不道徳」という括りとして使っていると(漠然と)解釈していたので、特定の個人に対して「お主もアクよのぅ」という言い方はなんか妙だ。「お主も悪人よのぅ」なら全然問題ないけど。実際その時代の官僚達が「ワル」なんてくだけた言葉を使っていたか、その当時にその言い方が一般的だったかというのはまあ置いといて、いわゆるオフレコの密談の場で悪人同士がそれなりに打ち解けた会話をしている場面で、現代人が違和感なく聞ける範囲の言い回しとして「ワル」なのだろうと思うのだが、「アク」...?

初めて聞いた時は単純に台本の「悪」を読み違えたのかと思ったが、少なくとも実際の時代劇での会話を聞いたことがある人なら「ワル」と読むだろうし、そもそも生放送でもない限り間違えて読んだものをそのまま放送するわけはないだろうし、その後も何度も「アク」の方を耳にしたということは実はこっちが正しいのか?とか、昔の時代劇では「ワル」と言っていたがその後「この時代にワルとか言わないだろう。今後はアクと読むように」とか業界内(?)でお達しが出たのか?とか、思い出す/どこかで「ワル」読みの台詞を聞く度一人で色々考えていたのだった。ところが、今回実家に送ろうとブックマークしておいた『山吹色のお菓子』サイトを色々読んでいたところ、ここにはしっかり「お主もわるよのぉぅ...」と書いてある。で、なんか味方を得た気分で嬉しかったのだが、同時に疑問再燃。これってどちらが正しいというか普通の言い回しなんでしょうか。実はどっちもありなんでしょうか。というわけでどなたか答えをご存じの方、あるいは実は自分も気になってた!という方、いらっしゃったら悪代官について語り合いませんか。


更にもう一つ、同じ台詞に関連してだけど今度はお菓子についてくる英訳についての話題。いや厳密にいうとこれも日本語の話だけど。先日も引用したが、この「お主も悪よのぅ」が= "You are as bad as me, aren't you?"と訳されている。直訳すると「お前は私と同じくらい悪い奴だ」となる。ここで何となくこの英訳に違和感。勿論英語としては全く問題ないのだが、自分の違和感はこの「お主も」の「も」を「自分も悪いがお前も」の「も」=「自分と同じくらい」と解釈したところにあるのだと思う。この「も」って、「私もあなたも」の「も」なのだろうか?確かにこの場合、代官本人も悪いことをしている自覚があることは明らかなので、「お主もわしと同じくらいワルだのぅ」という意味で言っている、という解釈も不自然ではない。その後に来るやはり典型的な商人側の返しとして「いえいえ、お代官様ほどでは」という台詞も、勿体なくもご自分と同じレヴェルの腹の中真っ黒な悪党と評して下さったお代官様に対する謙遜と考えれば、会話の流れとしても全く破綻しない。が、それでもこの「お主も悪よのぅ」=as bad as meというのはどうもしっくりこない。

で、自分が持っている印象の「○○も」の使い方で、他に似たような表現を考えてみた。えーと、例えば仕事を二つ掛け持ちして睡眠時間を削って昼も夜も働いている人に友人が「あなたも頑張るわねぇ」と言った場合、「私も頑張ってるけどあなたも頑張るわね」という意味だろうか。...ちょっと違うのでは。その発言をした人も相手と同じくらい頑張ってバリバリ働きまくっている人でない限り。ある人の息子が禄でもないドラ息子で親が苦労のし通し、という話を別の知人達がしている時に、「あの息子も困ったもんだよ」と言った場合、「俺の息子も困った奴だがあの息子も同じくらい困った奴だ」という意味は...ないと思う。あるいは趣味の車にひたすらお金をかけて車体は常にピカピカ内装も超豪華、でも自分は赤貧生活、とかいう人のことを、友人が半ば呆れて「あいつもよくやるよ」と言った場合、「俺も趣味の爬虫類飼育に数百万注ぎ込んで毎月大変なことになってるけど、あいつも俺に負けずよくやるよ」という意味は...まずない。多分。

というわけで手元の辞書を引いてみた。係助詞の「も」。まずは(1) 「その物事と同様・類似のものが他にもあることを示す」これが「同じくらい」の「も」だろう。更に見ていくと、「(6) 軽い感動、強調を表す(以上「角川国語辞典」新版を引用)」...これじゃなかろうか。「あなたも」「あいつも」「お主も」の「も」。つまり「お主も悪よのぅ」の「も」は相模屋(仮)の悪さを単に強調する「も」、あるいは「全く大した悪人だのぅ」という感動と言うか軽い感嘆ということになる。この解釈の場合の相模屋(仮)の返し「いえいえお代官様ほどでは」も、「そこまで感嘆なさるるほどの悪党だと持ち上げて(下げて?)頂きましたが、流石にこの相模屋もお代官様ほど人でなしではございませんよイヒヒヒヒ」という意味だと考えればこれまた破綻はない。この線が正しいと考えた場合、「私と同じくらい悪い」という解釈の「as bad as me」の表現はあたらないことになる。

では「お主も悪よのぅ」の英訳はどうなるか。「も」を強調として、簡単に言ったら「You are so bad, aren'd you? (お前は本当に悪い奴だな)」かな。しかしこれじゃあっさり過ぎる感じなので、感嘆の意味も入れて「You are such a bad guy, aren't you? (お前はまったく(これほどの)悪人だな)」くらいだろうか。ついでにこれに対する「いえいえお代官(以下略)」は、「Oh no, not as bad as you are. (いえいえ、あなたほど悪くはありませんよ)」「I'm no match for you. (あなたにはかないませんよ)」あるいは「I'm nothing compared to you. (あなたに比べたら私など取るに足りませんよ=大悪党のお代官様からすれば私など比べ物にならない小物でございますよふぉふぉふぉふぉ)」...辺りだろうか。勿論時代劇で「お主も...」を使った制作側が「as bad as」の方の意味で使っていたこともないとは言えないし、山吹色のお菓子の英訳栞の解釈が間違っているとも言えないわけだけど。

何だかぐだぐだ書き連ねて何を言いたいかと言うと、今までほとんどその場の状況を把握する&お約束のやり取りを楽しむ程度の扱いで聞き流していた日本語のちょっとした表現を、お菓子の栞の英訳のお陰で改めて考えてみる機会ができたわけで、英訳がどうのこうのと言うよりは全く同じ言葉の使い方でも複数の解釈ができる日本語は深いのぅ、と今更ながら思ってみたわけです。やっぱり凄いぞ山吹色のお菓子。ちなみに先日リンクした販売サイトの「玉虫色の回答」頁に加えて、「袖の下豆知識」頁も全力でお勧めです。時代劇好きの方には特に。



実家から今年最初のトマト屋さんのトマトが来たー。今年もやっぱり甘い。びっくりするほど甘い。トマト屋さんの老ご夫婦、今年もお元気なようで何よりです。


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