Congratulations, Roger.2009/07/06 23:58


昨夜(日本時間)のウィンブルドン男子決勝、めでたく(←個人的に)スイスのロジャー・フェデラーが米国のアンディ・ロディックに競り勝ちましたな。やたー。新記録のウィンブルドン15勝達成でもあるし、昨年スペインのラファエル・ナダルに連破を阻まれた後でもあるので喜びもひとしおでありましょう。...しかし疲れた。いや自分は第2セットが始まってから見始めたし(深夜になってからだろうと思ってたらBBCサイトで既にライヴ記事が上がっていて慌ててTVをつけた)ただTV観てるだけだしぶっ通しで四時間対戦してる二人が世界中で一番疲れてるわけだけど、特にあの第5セットは疲れたー。去年のフェデラーXナダル戦もあんなだったような。リードしては追い付かれリードしては追い付かれ。

でも3時間を越えて双方疲れてきてるなーというのは分かっても、最終セット後半になっても追い付かれこそすれリードされはしなかったフェデラーはやはり凄いと思う。ミスで1ゲーム落として追い付かれても、次のゲームで凄い鋭角ショットを連続で決めてあっさり1ゲームリードに戻したりというパターンが何度もあった。逆のパターンは(憶えている限り少なくとも最終セットでは)なかったので、やはりその辺りが現時点の両者の力の差なのかな。BBCの実況の人が「When the going gets tough, the tough get going」と言っていたが、まさにその通り〜!と思った。

この「When the going...」、日本語にすると「困難(tough)な状況(going)では、強靱(tough)な者が生き残る(get going)」くらいにしか訳しようがないので、原文の言葉遊び的なリズムが全くなくなってしまうのが残念。「タフな状況を切り抜けるのはタフな者だけ」とか...うーん全然うまくないな。get goingで「動き出す」「活動を始める」という意味もあるので、「世の中が厳しい状況になると、タフな人々が(世直し的な意味で)動き出す」というニュアンスで使われることもあるらしい。後半のthe toughはこの場合「タフな人々」と複数扱いなので、続くgetも単数形のgetsではなく複数形。今ちょっと検索してみたら、この言い回しはアメリカン・フットボールの監督の名言だとか?言葉の響き自体がそれこそタフでマッチョな感じがするので違和感はないけど、そこが初出だとすると随分新しい。それ以前にはなかった言い回しなんだろうか。どうでもいいけどタフタフ書いてたら「タフ」がゲシュタルト崩壊しそうになってきた。

ちなみに、80's音楽好きとしては「When the going gets tough, the tough get going」と言えばやはりビリー・オーシャン(Billy Ocean)のヒット曲が思い浮かぶわけですが。ハリウッド映画『ナイルの宝石』のテーマ曲というかエンド・タイトル曲?だったので、主演のマイケル・ダグラス、キャスリーン・ターナー、ダニー・デヴィートが白スーツ着てビリーの後ろで踊りながらコーラスするというえらい豪華なプロモーション・ビデオが楽しゅうございました。

...いつの間にか全然違う話になってますが。ウィンブルドンに話を戻して、今年は(去年もだったかも)仕事してたり何かで結局決勝戦しか観なかったので、誰が勝った負けたはBBCサイトのヘッドラインでちらっと見る程度だったのだが、去年の優勝者のナダルが開幕直前に棄権してたって知りませんでした。うろ覚えだけどBBCのヘッドラインでは「試合に負けた」とも取れるような表現だったので、予選で予想外の敗退か何かだったのかと思っていた。残念だったねラファ。

ウィンブルドンは試合そのものもだけどBBCの実況と解説の人たちのコメントや掛け合い(?)、ちょっとした軽口みたいなのも面白いので、一旦見始めると他のことが手につかなくなるのがちょっと困ると言うか。いや楽しいんだけど。昨日の決勝の解説はティム・ヘンマン(去年だか一昨年引退した英国の選手。国内では毎年期待されてたけど大抵クォーター・ファイナルまで残らないので日本ではほとんど放送されたことがないと思う)とボリス・ベッカーだった模様。あと合間合間に画面に映る意外な著名人なんかも原語だと(当たり前だけど)ちゃんと言及してくれるので楽しい。日本音声だと実況・解説の人が知らない分野の人・英国内の著名人なんかは何のコメントもないままずーっと画面に映っているだけでかなり間抜けなんだな。ボルグとかサンプラスとか貴賓席の人々は当然として、昨日はサッカーのマイケル・バラックとかマンチェスター・ユナイテッドのファーガソン監督、俳優のラッセル・クロウなんかが観客席においででした。あ、あとウディ・アレン(と奥方)もしょっちゅう映ってたな。皆テニス好きなのね。

BBCサイトに載っているRolexの広告(大会の公式時計がRolexらしく開催中はウィンブルドンのロゴを載せていた)に、今日になったら「最高の業績達成おめでとう、ロジャー(Congratulations Roger on a lifetime of crowning achievement)」という祝福の言葉が載っていたのはちょっと粋だなと思った。


コメント

_ みもざ ― 2009/07/07 21:25

日曜日、選挙速報が気になってちょっとだけ見てました。日本語の実況と解説だったので「あれ、また負けちゃうのん?」な印象のまま寝たんですが朝起きたら勝ってたwww
テニスって全然知らないんですけど長丁場なんですね。そりゃタフじゃなかったら勝てませんね。
When the going gets tough, the tough get going
ってかっこいいなぁ。
アテネでしたっけか、体操の実況の「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ!」なんかもかっこよかったですがしゃれっ気はないですし。
低羽化、いや、ていうか、日本人がいうと駄洒落ばかりになりそうな気がしますんですー。

_ りあん ― 2009/07/08 23:15

えへへ褐炭ですよ、いや勝ったんですよー。確かに決勝戦を通して(第一セットは見逃したので詳細は分かりませんが)フェデラーが圧倒的優位という状況にはならなかったので、リードはしていても全く気が抜けない状態でしたが、日本側では負けそうな実況でしたか?原語ではどちらかというと「フェデラーが勝つであろうことを前提としたロディックの善戦振り」を伝えていた感じだったので、一見かなりフェデラーが苦境に立った時でも何とかTVを消さずに観ていられました(←小心者)。ロディックだってこれで決勝戦は3度目だし(しかも毎回対フェデラー)、ここでフェデラーが崩れたらもしかすると...という場面も一度ならずあったのは確かだとは思いますが、やっぱり実況・解説陣は双方の実力をそれだけ見極めてるってことなのかなぁと感心しました。

...でも、表彰式後BBCから日本語放送に切り替わって、「放送時間はあと一分ほどですが、最後に今年のウィンブルドンはいかがでしたか」と聞かれた日本の解説者の答えが「いやー、感動しましたねー!」...だけだったのには正直唖然としました。いやその方だって立派な選手だったんだろうし聞いてなかった時はいい解説をなさってたのかも知れないですが、仮にも「解説者」がそれってどうなのかと。質問したアナウンサーも「...はあ」て感じだったのは気のせいかしら。

先日の記事、もう一度読み返してみたら第5セットまであったはずの試合をなぜか第3セットと間違って書いていたのでさっき慌てて直しましたが(て既に一日以上間違ったままだったけど)、やはり決勝とか力が拮抗している相手同士だと長丁場になるみたいですね。昨年のフェデラーXナダルもそんなだった記憶がありますし。今回この第5セットがほんっっっと、観てるだけなのにえらい疲れました。わたしも未だにルールはよく分からないのですが、テニスってまあダブルスはありますが基本的にチームじゃないからずっと一人で動き通しだし、選手交代もできないし、休憩時間なんかあっちゅうまに終わるし、試合中のコーチの指導もないし、決着がつくまで延々やらないとならないし(日没で続きは明日というのはあった気もしますが)、お茶の時間もないし(←それは99.9%のスポーツがない)、スポーツの中で一番過酷かも知れないと思います。技術や体力ももちろんですが精神力が物凄く必要じゃないかと。「the tough get going」のタフさはこの場合精神面の強さが大きい気がします。

名言とか格言、日本でも(全然違う例ですが)「貧すれば貪する」とか「ならぬ堪忍するが堪忍」とか(いい例が思い付かない...)、言葉の響きやリズムをうまく活かしたものは色々ありますが、故事とかじゃなくて現代の人が言ったフレーズがこういう風に頻繁に使われる例ってそんなにはない気がしますよね。もう少し検索してみたら、このWhen the going...はジョン・F・ケネディの父親のジョゼフ・P・ケネディと、ノルウェイ生まれのアメリカン・フットボール選手&監督のKnute Rockneという二人が出処らしいです。なぜ二人いるのかよく分かりませんが...一方が先に言ったことをもう一方が後にうまい使い方をして広めたとか?

それはともかく、こういう名言(と後に言われる発言)を言う人って「よーしこういう事態になったらああ言うぞ!」ってタイミングを測ってたりするのか、それともさらっと出てくるのかどうなんでしょうね。going gets toughレベルのがその場でさらっと出てきたら凄いですが。最近の日本のスポーツ実況(特に人気競技の)には前もって考えておいて受けを狙って言ってるんだろうな...と思うような表現をことさら乱発する人がいますが、そういうのに限って陳腐で聞いてる方が恥ずかしいし、気の利いた表現で受けを取る以前に進行中の競技を的確に伝えるという基本ができていないような気がしたり。

_ みもざ ― 2009/07/11 14:09

貧すれば鈍する、あたりがちっとも思い浮かばずハナクソ丸めて万金丹を思い浮かべてしまったワタクシをお許しください…。
「ん」が三つ重なってなんだか楽しくなって・・・いやいやいや下品だわ。
When the going gets tough, the tough get going は知られた言い回しなんですね。日本ではそういう例ってあるのかなぁ。名科白をもじったり駄洒落にしたりというのはよくある気がしますが。

で、栄光の架け橋なんかもとっさに出たんではないんだろうと言う気はします。いろいろ自分の引き出しに「素敵な言い回し」をストックしてあるんだろうなぁ、と。
それが身になってさらりと出てくるといいんでしょうね。
逆に実況アナの延長で報道キャスターなんかやっちゃうのも恥ずかしいですねえ。

ところでWhen the going gets tough, the tough get going があまりにも素敵だったのでとあるメルマガの感想に書いて送ってしまいました、すみません。りあんさんがお気を悪くされませんように…。

_ りあん ― 2009/07/12 01:29

あ、しまった先のお返事「鈍する」が「貪する」になってました。誤用の方の漢字ですね。万金丹で何となく「鰯の頭も信心」を思い出しましたがこれも発音的に切れはいいけど洒落てるわけではないか。日本語の格言関係、リズムがいいものは多いですが韻を踏んだり音を揃えてあるものってなかなか思い付きませんね。英語なんかは、まあ語尾のヴァリエーションが比較的限られているのもあって語感的にも調子のいいものが多い気がしますけども。漱石の「智に働けば角が立つ、情に棹させば流される〜」なんかもリズムはいいですが発音的に揃えてあるわけではないですしねー。

あ、今「ことわざデータバンク」というサイトを見て出てきた「青は藍より出でて藍より青し」なんかはリズムや音の反復という意味ではちょっと近いかも?最初の「青」は名詞で後の「青」は形容詞として使ってますし。しかしこのサイトによるとこの言葉って出展は『荀子』なんですね。そして英語版になると「The scholar may be better than the master.(弟子が師を超えることもある)」と何の含蓄もないつまらん意訳になっていて萎えました。それでもscholarとmasterで一応韻は踏んでますが。
http://www.sanabo.com/kotowaza/arc/2005/12/post_10.html

駄洒落関係だと韻を踏んでいるものも多いかもですね。「亀の甲より年の功」とか、...今上のことわざデータバンクを見たら「家柄より芋茎」てのもありました(笑)。

going gets tough、わたし自身はこれも格言の類かと思っていたのですが(品詞の使い方が比較的今風なのでそんなに古い感じはしませんでしたが)、ケネディ父とかアメフト監督ほど最近の初出だとは思わなかったのでちょっとびっくりです。前半と後半で同じ単語の並びを逆にして、意味あいや品詞をそれぞれ変化させて意味の通る文章にした上にリズムもいい、というところがやはりうまいなあと思います。単語そのものの意味と語感のせいもあってか、やはりスポーツ関係でよく使われるみたいですね。あー、でもやっぱり個人的にはビリー・オーシャンのあの歌が頭の中でぐるぐる(笑)。

「栄光の架け橋」って普通に話していて出てくる言葉でもないですしね、やはりある程度は仕込んでおくのかも知れませんね。まあひと試合に一つくらい文学的?な言い回しをうまく使う程度なら印象に残る発言にもなるでしょうが、最近の日本のスポーツ中継、主に民放のをたまに見るとどれもこれもプロレス中継かと思うような大袈裟な形容を使ったり選手に変なあだ名をつけたりで、凝った(とその人が思っているらしい)言い回しを連発する方に一所懸命で実況がおろそかになってないか、という本末転倒なものが多い感じでげんなりしちゃいます。

> 実況アナの延長で報道キャスター
放送局側も「人気アナウンサーだから目玉番組にも出そう」的な安易な人選をしているのがあからさまですよね。適材適所というものがあると思うんですが。最近はNHKもその辺り民放に追従している傾向が感じられて何だかイヤンです。

おお、When the going gets tough, the tough get goingを目る間が、いやメルマガの感想に!や、わたしが言った言葉じゃないですし(笑)、わたし自身BBCの実況のおじさんがいいところで(確か接戦で両者結構辛かった状況でフェデラーが粘り勝ちでゲームを押さえたような場面)さらっと言ったのを「確かに!」と思った口なので、ここに書いてみたのがみもざさんの刺激になったのだったら嬉しいでーす。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック